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かつてゲーオタだったかもしれない人の日記

風来のシレン4感想番外編:「旅の神クロンの追い風を!」

しばらくいろいろあったシレン4ですが、作品そのものについては感想その3で書いたように一区切りつけたつもりです。

その中で今の開発スタッフとの価値観に決して埋められない溝があると述べ、モンスターの凶悪化を代表例として出しましたが、実のところ価値感の違いを感じているのはそれだけではありません。とりわけ呪いの仕様と関連したアイテムに対する価値観にもモンスターとはまた別ベクトルで同じくらい埋められない溝を感じていますが、それだけでまた数時間は語れるほどなので別の機会に語ることにします。

今回話題にするのはシレンの世界観についてです。
そう、価値観の違いを感じるのはゲームシステムだけではないのです。
ゲームがゲームだけに世界観やストーリーなんかどうでもいいという方がほとんどでしょうが、少なくとも私にとってはこれもまた上記の2つと同じくらい譲れないポジションを占めている大切な要素です。

では世界観のどこに価値観の違いを感じるか…それはひとえにクロンをはじめとしたリーバ八獣神の扱いです。

シリーズに共通するシステムとして突風がありますが、私は初代シレンをプレイしていた当時からこの突風の設定が特に印象に残って今も頭から離れません。

風来人とは旅の神クロンを信仰し、一箇所に留まれぬ定めの旅ガラスであります。
しかしその旅ガラスの定めを破って留まろうとする者にクロンが差し向ける警告が突風なのです。

この設定そのものは斬新というわけでもなければ取り立てて素晴らしいというほどではないでしょう。
さらにミもフタも無い事を言ってしまえば、突風という要素自体が1フロアでいつまでも稼がせないためのゲーム的な都合に過ぎません。

じゃあなぜこの突風の設定が私の印象に残っているのでしょうか。
その答えは突風ではなく、むしろ周りに目を向けることで見えてきます。


そもそもシレン自体、ゲームの中でも特に整合性や説得力など皆無な作品です。
入れたアイテムが合成される壺とか、肉を食べたらそのモンスターに変身するとか、大体「入るたびに形が変わる不思議のダンジョン」という基本設定からして意味不明です。なぜそうなるのかといわれても「それが不思議のダンジョンだから」で済まされる何でもアリな世界であり、そこにリアリティや整合性を求めることなどナンセンスです。シレンのストーリーなどどうでもいいという意見があるのも、こういう世界だからこそでしょう。


それを踏まえると突風も「それが不思議のダンジョンだから」で済ませてしまって何の問題も無いわけであり、おそらくこの設定が無かったところでそこにツッコミを入れる人は皆無でしょう。

にもかかわらず上記のような設定が用意されています。
この設定に全てのプレイヤーを納得させるだけの説得力があるかどうかはわかりませんが、少なくとも突風の存在に説得力を持たせようとしているのは確かです。

「何でもアリ」が許される世界なのに何故わざわざこんな設定が用意されているのでしょうか。攻略本の開発インタビューや雑誌にも載っておらず、今となってはその理由を知る術もありませんが一つだけ確かなことは言えます。

それはこの設定を考えたスタッフにとって「何でもアリ」で済ませることのできない、外せない設定だったということです。そこにはゲーム開発者として決して譲れない強いこだわりを感じます。…本当にそのスタッフがそこまでこだわったのかは分かりませんが、少なくとも私はシレンというゲームをプレイしてそう感じました。


私にとって突風の設定が印象に残っているというのはこういった理由があるからなのです。
そしてその設定の根源となるのは風来人と彼らが信ずる旅の神クロンであり、更にはシレンの世界で信仰されているリーバ八獣神へとつながるのです。

このリーバ八獣神とそこに生きる人々という世界観は初代からアスカまで規模の差はあれど、変わることなく受け継がれてきました。シリーズ中でもコミカルテイストの強いシレン2だって、OPで旅の神クロンの名前がはっきりと出てきます。という事はアスカまでのスタッフもまたリーバ八獣神の設定は変えてはいけないと理解して開発していたのです。アスカに至っては祭来国編でドラス・ムラド・ギトー・サカイと遂に八獣神全てにまでスポットを当てたストーリーが展開されます。私がアスカを最高傑作だと評している理由の一端は間違いなくここにもあり、外注であってもアスカの開発スタッフはそれまでのシレンをいろんな意味でちゃんと理解していたと思っています。


しかしそれら過去作に受け継がれてきたものを何一つ理解しようとせず、全てを破壊しつくしたのがあのシレン3なのです。シナリオを担当した加藤ももちろんですが、あれを通したチュンソフトも同罪です。

そしてシレン4でも引き続き加藤がシナリオを担当し、短くはなったものの相変わらずクロンをはじめとしたリーバ八獣神にまつわる設定を全て無視した世界観とストーリーになっています。

私が今回取り上げたリーバ八獣神の設定など、シレンを料理で例えれば味(中身)どころかそれを盛る器(見た目)、いえ、器に描かれた模様程度の存在に過ぎません。料理なんて味が全て、ましてや器の模様なんか一切関係ないという意見も当然あるでしょう。しかし私はシレンという料理を味だけでなく、盛られた器の模様とそこに込められたかつての料理人の想いまで含めて惚れ込んだのです。

リーバ八獣神が信仰されていない世界で、クロンの名を忘れた風来人を吹き飛ばす突風とは一体何なのか、今の開発スタッフは少しでも考えた事があるのでしょうか。


このようにシステムやゲームバランスだけに留まらず世界観一つとっても私と彼らの間には埋められない溝が存在しているのです。他にもかつての法則を無視した一部レベル4モンスターのネーミングなども広い意味でこの世界観の範疇に入るでしょう。

旅の神クロンの追い風を受けて旅立ったシレンはいまだ帰ってきません。

コメント

ありがとうございます

2~3日前から、読ませていただいております。
シレン4のレビューは数あれど、シリーズにここまで情熱を感じる文章に、たいへん感銘を受けております。
数時間かけて語れるくらいの思いのたけを、残らず拝見させて欲しくて堪りません。
本当にありがとうありがとうございます。

  • 2010/04/07(水) 10:21:10 |
  • URL |
  • ktm #T61DVtR6
  • [ 編集]

コメントありがとうございます。

私にとってシレンとは語るからには自分を偽ることなど不可能なタイトルであり、その結果おそらく4に対する感想(特にその3)やシリーズへのこだわりは傍から見ればもはや精神病のレベルにまで達しているといっても過言ではありません。

そんな文章に目を通していただいた上で、そのようなお褒めの言葉をいただけるとは勿体無いくらいで、こちらこそ感謝しております。

果たして内容がご期待に沿えるかどうかはわかりませんが、件のアイテムに対する価値観についても近い内に必ず書きますので、またその時は目を通していただけると幸いです。

  • 2010/04/08(木) 01:46:10 |
  • URL |
  • 筆者 #mzMb781o
  • [ 編集]

私もこれまで数多くのジャンルのゲームをプレイしてきましたが、シレンというゲームに出会えたことは何よりの幸運だと思っております。
恐らく10年後20年後もプレイしているであろう、一生物のシリーズでしょう。

ですがこのブログを見させていただいて、若輩者の私の、シレンへの愛情はまだまだだと思い知らされました。

特に筆者さんは、主観的な感想と客観的な評価を毎回きっちり線引きしているのが感心させられます。是非見習いたいです。
シリーズ全体に対する深い愛情と考察に基く記事には、新参のシレンファンとして毎回新しい発見をさせていただいてます。
不躾ながら、今後は新作だけでなく初代や2など旧作に関しても、機会があれば書いていただけると有り難いです。

そういえば、確かに新参ではありますが、そんなににわかアンチっぽいですかね。
一応旧作も一通りプレイしたのですが……。

  • 2010/04/09(金) 21:40:27 |
  • URL |
  • 由太 #Ve8b1bDM
  • [ 編集]

愛情…私もシレンに対しては一家言持ってはいますが、それを愛情と呼んでいいのかは自分でもよく分かりません。

ただ、シレンというゲームのプレイヤーにはいろんな経験の人がいて、いろんな価値観の人がいて、いろんな遊び方ができるゲームだと思っているのは確かです。

それは3以外のシリーズに対しても同様で、最高傑作の位置が人によってどれになってもおかしくないほどの傑作ぞろいだと思っています。私はアスカですが、これが初代や2、GB2になるという人の意見もすんなり頷けます。4にしても同様です。

そしてそれだけの価値があるシリーズに出会えたことは私も幸運だと感謝しています。


若干ローカルな話になりますが、愛情という意味で私よりシレンを遊びこんでいるプレイヤーの方はたくさんいらっしゃるんですよね。初代やGB2の某サイトもそうですし、アスカ公式にいた当時から脱帽するような腕前・ポリシーを持った方々は何人も見かけました。

>見習いたい
値段分の価値のある商品を出している会社に向かって潰れろとか言っている人間の文章を見習ってはいけません(笑)

結局のところ「ぼくのりそうとちがうからイヤ」って言ってるだけですし…。

それに新参と自称されつつも旧作を一通りプレイされ、私の戯言からもいろいろと読み取ってくださる由太さんの方がよっぽどシレンに対して愛情をお持ちだと思います。

お言葉はありがたいですが、旧作に関しては今のシレンに対する価値観自体が旧作の積み重ねによるものでして、そういう意味では初代や2を単体で取り上げるのはちと難しいです。…肝心の「シレン・アスカ」カテゴリのぞいてもほとんどプレイ日記ばっかやんけ…。

>にわかアンチ
これは「(4プレイ前の自分含む)ロクにプレイもせずに批判する連中」を指した表現であって、由太さんの事を揶揄したわけではございません。勘違いさせてしまって申し訳ありません。

私が感想で書いたような不満はプレイした人の中でも更に限定的なものばかりですが、件の冒険回数は画像だけで一目瞭然な仕様なためプレイしていない人でもすぐ気付くレベルのものです。
実際良いデキだと認めているだけに、こんな目立つミスを残しておくんじゃないという勿体なさを滲ませたのがあのコメントです。

  • 2010/04/10(土) 02:40:43 |
  • URL |
  • 筆者 #mzMb781o
  • [ 編集]

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