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かつてゲーオタだったかもしれない人の日記

チンチコーレ!チュンソフト

そんな訳でチュンソフトのサウンドノベル「街」が終わったのでいつものごとく感想といきますか。なおプレイしたのはサターン版です。
まぁ最初の発売日がもう15年近くも前でそれから何度も移植されており、同ジャンルの中でも評価がしっかり固まっている作品ではありますが、自分でプレイしてみて確かにコレはスゴイ作品だと実感しました。

ゲームの流れは端的に説明すると、渋谷を舞台に8人の5日間(2人だけ3日間)を読み進めてながら、時々現れる選択肢を選ぶというサウンドノベルです。8人はそれぞれ年齢も職業も立場も全て異なり、基本的に共通点は皆無です。アドベンチャーでRPGでたまに用いられる一つの事件を複数の主人公の視点から描写していくというスタイルではなく、本当に何の関係も無い赤の他人です。

この赤の他人同士の5日間を途中でバッドエンドにならないよう最後まで進めるのがゲームの目的ですが、この作品の特徴にして面白いのはここからです。

まず単純に直前の選択肢を間違えてバッドエンドになるというパターンがありますが、これは別に正しい選択肢を選びなおせばいいだけで何の問題もありません。

しかしある一人のシナリオを読み進めていると正しい選択肢を選んでいても、あるいは選択肢が出てこなかったにもかかわらず途中で必ずバッドエンド=ゲームオーバーになってしまいます。

これを回避するためのカギが隠されているのが他の主人公の行動なのです。
例えばある主人公Aのシナリオにおいて街中で人とぶつかって騒ぎを起こし、その場面を偶然居合わせた刑事の主人公Bが発見して逮捕→バッドエンドなんていうのがいきなり序盤であります。
しかしここでBのシナリオをプレイし、同じ場面で騒ぎを無視する選択肢を選んでおきます。そしてもう一度Aのシナリオをプレイすると今度はBが現れず、逮捕されなかった事で先へと進めるようになるのです。

代表的なのが上のように一人の選択肢が一人に影響を及ぼすケースですが、ゲームを進めていくとより複雑なケースも出てきます。
主人公Cがある女性にバレッタ(髪留め)をプレゼント→その女性が他の主人公Dと口論になり、Dがそのバレッタを凶器として女性を殺害してしまう→Dは逮捕され、Cもショックで精神崩壊、ついでにその場にいた主人公EとFも警察で事情聴取を受け、酔っ払っていたFは悪事をポロッと白状してお縄になってしまいますw
これらを防ぐためにはCが渡すプレゼントを別の物にしておく必要がありますが、このように一人の主人公の行動が複数の主人公のバッドエンドを引き起こすケースもあり一筋縄では行きません。

またこれはバッドエンドではありませんが、一人のシナリオを進めていると途中で「つづく」と表示され中断してしまうことがあります。
ゲーム中にはよく語句の説明としてTIPSが入るのですが、時にはその中に他の主人公へとザッピング(飛べる)できるものがあり、これを使わないと「つづく」の先へ進む事はできません。

いつ・どこの・誰の・どの行動がロックを外すためのキーになっているのか。
全員のストーリーを進めるためにはそれを考える必要があり、ただ読み進め選択肢を選ぶだけのゲームとは一線を画しています。

この一見全く何の関係も無い他人の何気ないちょっとした行動が他のある人にとってはその後の運命を左右してしまう場合もあるというストーリー構成、そしてそれをストーリーだけでなくシステムとしてきちんと絡めているというのは見事というほかありません。

このアイデアとシステムはホントにスゴイです。
2人分くらいを思いつくのもまだしも、それを8人分+α(&多数の脇役)も練り上げ、実際にこうして作品として形にしてしまうとはその労力は想像するに余りあります。

冗談抜きでアドベンチャーというジャンル、もしくはゲームの歴史に残すべき(といいますか残ってるか)素晴らしいアイデアとシステムです。



とこのようにアイデアとシステムは歴史に残るほど素晴らしいのですけど、それに対して個々のシナリオの出来はお世辞にも手放しで褒められる内容ではないというのが正直なところです。

以下各シナリオについての感想をざっと。

・『オタク刑事走る!』
爆弾コード切断の選択肢でバッドエンド水増ししすぎ。
真犯人の動機やストーリー自体も悪くは無いのですが、暗号の推理部分が難解過ぎて桂馬たちが勝手に解いていくのを見ているだけのプレイヤー置いてきぼりになってしまいます。アナグラムも無理やり過ぎかと。

・『The wrong man 牛』『The wrong man 馬』
いやいや!絶対すぐバレるでしょう!というのはヤボとしても、何でいつの間にか牛尾がみちるに惚れてるのかあまりに唐突過ぎて全く理解できないのですが。そんな素振りとかも無かったじゃん。馬部も馬部であの後ヤクザの世界と関わっていくとかキャラ的に無理あり過ぎ。
この2本に関してはザッピングのアピールをするためなのでしょうが、3日で終わっている事やゲーム内で4日目と5日目を公募しているあたり未完成だったのだろうというのが窺えます。

・『七曜会』
最終日までは一番面白かったのに何やあのオチは!

・『シュレディンガーの手』
結局市川は本人言うところの良心作を書けていたのか?それを含めてシュレディンガーなんでしょうが、どうにもシナリオライターの自己陶酔が前面に押し出されててウンザリ。

・『で・き・ちゃっ・た』
あのー…これ陽平視点のコメディータッチで描かれているから笑えますが、冷静に見ると高校生の身分で3人も女の子孕ませて何の音沙汰も無かった挙句、現在進行形の子は堕ろさせようとしているとか陽平ただのガチクズですよね。しかもオチもバッドエンドのパターンを見る限り陽平がまたすぐに浮気して破滅する未来しか見えないのですけど。

・『迷える外人部隊』
気に入らないからといってすぐに暴力を振るってはいけません。俺は他人とは違うんだという中二病は卒業しましょう。

・『やせるおもい』
一番最初の選択肢の結婚ゴールで全然バッドエンドじゃないやんけ!
それはさておき途中美子のあまりの食欲にツッコミ入れながらも、ストーリー的には一番ムリもなくすんなり終わってくれた印象です。でもカオルの3重人格っぽい伏線やらが非常に気になったんですが…。

・『青ムシ抄』
確かに青ムシは嫌われ者ですけど、チクリにしたって友達が欲しいからですし(陽平は自業自得)、ホームレス狩りの件にしても権力者に逆らえない弱者の立場というモノがあるのです。実際ガトリングガン乱射のシーンでも人を撃つことに対して心の中では抵抗して看板や缶だけにしてましたし。隆二の時はそりゃ目の前で他2人があんな目にされてたら仕方ないでしょう。エロ漫画を描いてたりオタクな行動を取っていてもちゃんと自分で生活費を稼いでいますし…同情できないのは盗撮くらいでしょうか。

そういった事を考えると右手のケガやオチは因果応報というにはあまりにも重く、どうして青ムシがあそこまでの仕打ちを受けなければいけないのかと悲しくなりました。最後に本人が希望を持ってくれているのが救いですが。

・『花火』
えー何、日本中って事はお父さんそんな偉い人なのですか。
何かその辺含めてどうも力技で感動させようとしている感が強くて受け付けませんでした。


全体的にバッドエンドは抜きにしても強引な展開や消化不良が多く、オチも投げっぱなしのシナリオが多い気がしました。

またシナリオ自体もそれぞれ個人の好みはあるのでしょうが、個人的には長坂秀佳という方の関わっている『シュレディンガーの手』『迷える外人部隊』『花火』は肌に合わなかったです。
といいますのも他のシナリオの場合、正志なら秘密を共有したりそれをネタに脅迫するという面白さ、美子なら例え辛くとも好きな人に嫌われたくない一心、陽平なら周りの皆にいい顔したいという八方美人さ、桂馬の場合は正義感と、主人公にはキャラクターとして大なり小なり共感できる要素が描かれているのに対し、長坂さんメインのものにはそういった要素が全然感じられないのです。
基本的に主人公が自分一人で葛藤しているだけで、会話のシーンも隆二の最後のシーンを除いて相手と意志の疎通を行う素振りがまるで見られません。

おそらくこの方の作風なのでしょうが、市川のシナリオでのテレビに対するスタンスなどを見る限り非常にプライドが高くてこだわりのある方なのだろうというのは窺えます。私はゴメンです。



ここからはそれら以外についていくつか。

TIPSは豆知識的に役立つものからホントにくだらないものまであまりの量に圧倒されます。思い切り書いた人の主観丸出しだったり、シリアスな場面にそぐわない悪ふざけも結構目立ちますが、システム同様その作りこみには脱帽です。

シナリオ自体の感想は上に書きましたが、せっかく没頭していたのに「つづく」で中断されると水を差される気になります。そうなるとゲーム的には仕方ありませんが、読みたいシナリオを進めるためには読みたくないシナリオも進める必要があるのが難です。

最初のうちは「別シナリオの脇役のTIPS→別シナリオの主人公へ」などワンクッション置いたザッピングだったのに、後半になると「叫び声をあげる→一方同じ頃叫びたい思いの人物がもう一人いる」などどんどん適当になっていくような気が。確かに最終日にもなると全員それぞれのストーリーの佳境で絡めにくくなりますけど。

ちょっと抵抗ありそうだった実写のグラフィックですが、役者さんの演技もかなりハマっていてなかなか味があります。後の移植版ではシルエットが追加されているようですが、少なくともこのサターン版をプレイした限りシルエットでは演出面の魅力が半減してしまうといって過言ではないと思いますよ。

背景や小道具などさすがに15年前だけあっていろいろと時代を感じさせます。携帯電話などその際たるものですが、渋谷の町並みなど住んでいる人からすると感慨深いものがあるかもしれません。逆に渋谷から縁遠い場所に住んでいる人にとっては遠い世界に見えるのでしょうね。

背景にマムルボンボンなどちょくちょくチュンソフトの他の作品ネタが出てくるのもまた…、それにしても雪印コーヒー牛乳や看板などを見るに版権ものがかなり多いですね。とても予算がかかっていて、売り上げを考えると当時のサターンだけでは回収しきれなかったんだろうなというのがしみじみと伝わってきます。



私にとってチュンソフトと言えば不思議のダンジョンシリーズで揺らぐ事のない評価を確立していたメーカーでした。(過去形なのが悲しい)

この「街」が発売されたのは1998年で、近い時期にはシレン・シレン2・トルネコ2などが出ています。
こうして今回別ジャンルの作品をプレイしたわけですが、改めて当時のチュンソフトの面白さ百発百中ぶりを実感させられる良い機会でした。ずっと昔に亡くなった故人の隠していた日記に触れたような気分です。

というわけでチュンソフトの傑作サウンドノベル「街」の感想でした。

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